EmDashの料金は本体0円。3年で比べるとここまで差がついた
結論から言います。EmDashというCMS本体は無償で、お金がかかるのは「動かす環境」と「作る・直す作業」の2つだけです。構造が単純なので、WordPressより料金が読みやすいのが実は最大の違いです。
この記事は、前回の総合レビュー(WordPressの更新地獄から抜ける。EmDash移行を実測した結果)で触れなかった「料金」だけを深掘りしたものです。Cloudflareの公式料金ページを実測し、本番で半年運用した公開実例と突き合わせて、発注側が見積もりを判定できる形に分解しました。
要点は次の3つです。
- CMS本体はMITライセンスのオープンソースで、ライセンス料・月額はゼロ
- ホスティングはCloudflare Workersが標準で、無料枠(1日10万リクエスト)から月5ドル(約1,000万リクエスト込み)で動く
- 3年トータルでは「ホスティング数十円〜数万円/月」と「保守を外注する場合の月額」で差がつく。作業費の内訳を先に押さえるのが見積もり判断のコツ
「EmDashは無料」の意味。CMS本体にライセンス料はない
EmDashはMITライセンスのオープンソースで、ソースコードはGitHub(emdash-cms/emdash)で公開されています。月額課金も、機能ごとのライセンス購入もありません。WordPressと同じ「ソフトはタダ、周辺でお金が動く」型のCMSです。
無料だからといって品質が緩いわけでもありません。正式版1.0が2026年9月28日にリリースされ、Cloudflareが開発・発表しているプロダクトです(経緯や機能の全体像はハブの記事で整理しています)。
「無料CMS」で使う人が実際に払うのは、歴史的に見てもソフト代ではありません。ホスティングと、作る人への対価です。EmDashはこの2つがどちらも構造的に読みやすい、というのがこの記事の前提です。
ホスティングの実価格。Cloudflare Workersは「無料枠」か「月5ドル」
EmDashの標準的な置き場所はCloudflare Workersです。公式料金ページ([Workers Pricing](https://developers.cloudflare.com/workers/platform/pricing/、2026-10-22取得)を実際に確認した結果が次の表です。
| プラン | リクエスト | CPU時間 | 料金 |
|---|---|---|---|
| Free | 1日10万リクエストまで | 1リクエスト10ミリ秒まで | 無料 |
| Paid(Standard) | 月1,000万リクエスト込み、超過は+0.30ドル/100万 | 月3万CPUミリ秒込み、超過は+0.02ドル/100万CPUミリ秒 | 最低5米ドル/月 |


画像データ(R2)やデータベース(D1)は固定月額ではなく従量課金で、毎月の無料枠があります。日本語の料金FAQ(Emdash CMS の Cloudflare 料金・請求 FAQ)も「コアCMSだけならFreeから始めて成長を監視する」ことを実務指針として挙げています。
更新作業のCPU上限が、無料か有料かの分かれ道
結論として、閲覧は無料枠で足りることが多く、判断を分けるのは管理画面での更新作業です。これには公開実例があります。本番で半年運用した実録記事(EmDash を本番で半年使った料金と WordPress 移行 - Shinobi Works)では、9サイトが無料プランのまま動いており、顧客のサイトのみ有料プラン(月5ドル)を前提にすると報告されています。理由は、管理画面での保存が無料枠のCPU上限(1リクエスト10ミリ秒)を超えるケースがあるためです。
整理すると次のとおりです。
- 読む人中心の小規模サイト: 無料枠で始めて問題が出たら有料へ。後から上げるだけで、移行のやり直しにはならない
- 更新頻度が高い・複数人で更新するサイト: 最初から有料(月5ドル)が実務的
- プラグインのサンドボックス実行など、有料プランの機能を使う場合: スキャフォの案内どおり有料プランが必要
私が公開しているデモサイト(my-marketing-site.emdash-demo-site.workers.dev)もWorkers上で動いています。小規模コーポレートサイトの閲覧は無料枠の射程内ですが、運用設計は案件ごとに判断します。
WordPress保守と3年トータルで比べる
ホスティング単体は安いので、意味があるのはトータルでの比較です。前提が違う数値を並べるのは無意味なので、出典のある数値だけを並べます。
| 方式 | 月額の出典 | 3年間の環境費の目安 |
|---|---|---|
| EmDash + Workers Free | 公式: 無料枠(1日10万リクエスト) | 0円(更新時のCPU上限に注意) |
| EmDash + Workers Paid | 公式: 最低5米ドル/月 | 3年で180米ドル(円換算は為替次第。参考: 1ドル=150円なら約2.7万円) |
| WordPress + XSERVER | スタンダードプラン月1,100円(12か月契約・通常価格、実録記事の引用値) | 39,600円 |
| WordPress + 保守の外注 | 月1万〜5万円(このブログの運営者が実務で見るレンジ。出典は保守リスクの記事) | 36万〜180万円 |
表の読み方を整理します。
- 環境費だけならEmDashが最安。WordPressのサーバー代(月1,100円)と比べても、Workers Paidの月5ドルは同水準かそれ以下です
- 自分で更新している人こそ、見えないコストを数えてください。サーバー代月1,100円の裏で、コア・プラグイン・PHPバージョンの更新作業と、乗っ取りのニュースを見るたびの不安は、あなたの時間で支払われています
- 保守を外注しているサイト(月1万〜5万円)では、EmDash移行でWordPress特有の更新(コア・プラグイン・PHPバージョン対応)が構造から消えます。これは保守契約の主要な作業内容なので、組み直しを除いたランニングコストは下がる方向に働きます
- 数値は2026-10-22時点。為替と料金改定で変わるので、判断時は出典元で再確認してください
制作と運用の作業費。ここが一番の変動要素
料金で一番幅が出るのは、ソフト代ではなく人への対価です。EmDash移行の作業は、内訳にすると次の5つに分けられます。
| 作業 | 内容 | 幅が出る理由 |
|---|---|---|
| 調査 | 現サーバー要件・プラグイン依存の棚卸し | WordPress歴が長いほど時間がかかる |
| デザイン | Astroコンポーネントとしてページを作る | 既製テーマが無いため、デザイン量がそのまま費用 |
| データ移行 | WXRエクスポート→取り込み→検証 | 記事数・画像数・カスタムブロックに比例 |
| 検証・公開 | URL設計・リダイレクト・フォームの組み直し | 機能の数で変わる |
| SEO引継ぎ | インデックス確認までの運用 | 公開後の設計で変わる |
費用相場の読み方そのものは費用相場と内訳の記事で解説しているとおりで、「レンジを先に出させ、内訳で裏取りする」のが発注側の守り方です。国内ではEmDashの運用を月額で引き受けるサービス(EmDash かんたん運用 β - kworks)も登場していますが、料金は問い合わせ制です。比較検討する場合は、同じ内訳形式で見積もりを取ると判断しやすくなります。
EmDash移行の費用相談は、調査レポートから
このサイトの運営者(フリーランスのWeb制作者)は、WordPressからのEmDash移行を受け付けています。料金の相談は固定額の断定ではなく、調査レポートにレンジを出す形で進めます。
- 問い合わせフォームから、サイトURLと現状を送る
- 調査レポートで、必要な作業の内訳と費用レンジ・リスクを提示(ここまでは着手しないので、納得するまで比較できます)
- 納得できたら本移行。データ移行 → 検証 → 公開 → SEO引継ぎ確認まで
「安くします」ではなく「どこにお金がかかり、どこがかからないかを先に数値で示す」ことが、この記事で説明した構造そのものです。
よくある質問
Q. EmDash本体はずっと無料ですか?
MITライセンスのオープンソースなので、ソフト自体のライセンス料はありません。変わりやすいのは周辺のホスティング料金と作業費です。料金改定は出典元で随時確認してください。
Q. Cloudflare Workersの無料枠でどこまで動きますか?
公式の無料枠は1日10万リクエストまでです。本番で半年運用した公開実例では、9サイトが無料プランのまま動いています。ただし管理画面での保存がCPU上限を超えるケースが報告されており、更新頻度が高いサイトは有料プランが安全です。
Q. 有料プラン(月5ドル)は必須ですか?
閲覧中心の小規模サイトでは無料枠で足りる例があります。必須になるのは、管理画面の操作が無料枠のCPU時間を超える場合と、プラグインのサンドボックス実行など有料プランの機能を使う場合です。どちらになるかは移行前の調査で分かります。
Q. WordPressより安くなりますか?
環境費は同等かEmDashが安く、総額を決めるのは更新の方式です。保守を外注しているサイト、更新に時間を取られているサイトでは、WordPress特有の更新(コア・プラグイン・PHP)が構造から消えるEmDashのほうが、総額も体感も下がる方向に働きます。いくら下がるかはサイトの規模で変わるため、内訳で確認しましょう。
Q. 月5ドルの他にかかるものは?
リクエストやCPUの超過分(従量)、画像データの保存(R2も従量+無料枠)、そして制作・移行の作業費です。超過は発生して初めて課金されるため、小規模サイトで突然大きな請求になる構造ではありません。
まとめ: 見積もりを判定するための3点
- EmDash本体はMITのオープンソース。お金は「Workersなどホスティング」と「作業費」に分かれる
- ホスティングは無料枠(1日10万リクエスト)から月5ドル。更新のCPU上限が有料に振れる分かれ道
- 見積もりの判定は「作業の内訳が出ているか」で見る。環境費は安いので、作業費のレンジと根拠が見積もりの質を決める
判断に必要な数字は、すべて調査レポートに揃えます。あなたがするのはサイトURLを送ることだけ。月5ドルの環境費と作業の内訳を先に見てから進められるので、金銭的なリスクは最小です。迷っている1か月も、保守費と不安は同じように請求され続けます。