結論から言います。「EmDashのテーマは少ない」はほぼ事実で、今のところサイトの見た目は「選ぶ」より「作る」が現実的です。これはEmDashの欠点というより、公式テーマ(テンプレート)が出たばかりの段階特有の状態です。そして制作者にとっては、デザインを組み立てる仕事がそのまま残っているという意味でもあります。
この記事は、WordPressの更新地獄から抜ける。EmDash移行を実測した結果のテーマ・デザイン編です。公式テーマの現状、公開されている制作現場の声、そして運営者が建設会社風のデモサイトを実際に再現したプロセスを公開します。「テーマが少ない」と言われたときに発注側がどう判断すべきかまで書きます。
要点は次の3つです。
- 公式テンプレートは4種(blog / starter / marketing / portfolio)。実測で確認した
- 既製テーマへの不満は実際にあり、「コードは優秀、デザインは壊滅的」という現場の声が公開されている
- 見た目を作る方法は2つ。既製テーマで始めるか、Astroで自作するか。当サイトのデモは後者で、プロセスを全部公開する
公式テーマの現状を実測する
EmDashのテーマは、公式ドキュメントでは「テンプレートをインストールする」仕組みとして説明されています(テーマ - EmDash CMS Everything(公式ドキュメントの日本語版))。インストール → 初回セットアップ → カスタマイズ、という流れです。
では、実際に何が選べるのか。私の環境でnpm create emdash@latestを実行したときに選べたテンプレートは、次の4種でした(2026-10-22実測)。
| テンプレート | 用途の想定 |
|---|---|
| blog | ブログ |
| starter | 最小構成のサイト |
| marketing | マーケティング用のサイト |
| portfolio | ポートフォリオ |
WordPressのテーマディレクトリに並ぶ数千単位のテーマと比べると、桁が違います。公式ドキュメントの説明も「テーマの中身をカスタマイズする」方向を前提としており、現状のEmDashでは、見た目の完成品を選ぶというより、骨格を選んで肉付けする段階です。
「コードは優秀、デザインは壊滅的」という現場の声
テーマの質については、公開された制作記録があります。noteの実録記事(コードは優秀、デザインは壊滅的。EmDashのテーマを作っています)は、AIにデザインを任せた結果の違和感を「壊滅的」と表現しつつ、プログラミング部分は本当に優秀で、モバイル対応もよくできていると評価しています。同じ記事で「固定費がなくなるのがいちばん嬉しい」という運用面の感想も書かれています。
この声は実測と整合します。EmDashのコード基盤(Astro + TypeScript)は堅牢なのに、「そのまま使える完成度の高いテーマ」の供給が追いついていない。WordPressが十数年かけて築いたテーマ市場を、EmDashはこれから積む段階です。
発注側にとって大事なのは、この読み方です。「テーマが少ない=選択肢がなく不便」と「テーマが少ない=誰かのデザイン資産の差がつきにくい」は、同じ事実の別の面です。次のセクションで、デザインを用意する2つの道を見ていきます。
デザインを用意する2つの道
| 方法 | 何をするか | 向いているケース |
|---|---|---|
| 既製テーマで始める | 4種のテンプレートを選び、色や文言をカスタマイズ | 速く安く始めたい。見た目の独自性はそこそこでよい |
| Astroで自作する | ページをコンポーネントとして実装する(開発者の仕事) | 独自のデザイン・既存サイトに寄せた見た目が必要 |
既製テーマでの開始は速い反面、似た見た目のサイトが増えます。自作は自由度が高い反面、デザインと実装の作業が発生します。WordPressで「有料テーマを買って完成」という経験をした人には、この部分がEmDashの一番の違いとして感じられるはずです。
なお、WordPressの既存テーマをEmDashに持ち込むことはできません。テーマの作りが違うためです。移行の際は「デザインをどうするか」が必ず論点になるので、事前に移行の判断材料で確認しておくことをおすすめします。
実測: 建設会社風デモはどう作ったか
「自作」といっても、非現実的な話ではありません。公開中のデモサイト(my-marketing-site.emdash-demo-site.workers.dev)は、実在の建設会社サイトを参考に、推測ではなく実測で再現する方針で作りました。プロセスを要約して公開します。
三原則
- 雰囲気で寄せない。色・サイズ・余白・要素の数と順序は、参考サイトの実測値をそのまま使う。「だいたい同じ」は「全然違う」に等しい
- 指摘を待たずに全差分を洗い出す。依頼者は差分を列挙するのに疲れている。制作側が参考サイトと自サイトを並べて潰す
- 最後はセクション単位の目視点検まで行う。数値が合っていても、描画順や疑似要素で見た目は壊れる
実測のやり方
- ブラウザ自動化で参考サイトを開き、実装と同じビューポート(1440px)に揃える
- DOMツリーをダンプして、セクションの種類・順序・高さを数値で把握する
- 参考サイトのCSSファイルをそのままダウンロードし、該当クラスの定義を確認する(Computed styleより確実で、
::before/::afterの正体も分かる) - 実測値をデザイン仕様として適用し、モバイル375pxまで確認する
この手法で、背景色・文字色・フォントとウェイト・縦書き見出しのサイズ、黄ピル型CTAボタン、白パネルの角丸とオフセットまで数値を揃えました。実装では、縦書きの複数列は改行ではなく要素の並び順で作る、通常CSSでは:global()が使えない場面があるといったEmDash/Astro特有の注意点もありましたが、日本語のコーポレートサイトらしさは、EmDash上でも問題なく再現できています。
事業内容セクションの実装例が次のスクショです。写真スライダーと白パネルを組み合わせた、テンプレートのままでは出ない構成です。

採用情報ページの実装例が次のスクショです。スティッキーな目次、写真のズレ配置、Q&Aアコーディオンといった構成を実装しています。

モバイル表示まで含めて作り込んでいます。公開実録でも「モバイル対応はよくやってくれている」と評価されていた、基盤(Astro)の部分です。
発注側が知っておくべき、費用への影響
テーマが少ないという事実は、費用の構造に直結します。WordPressでは「テーマ購入費+カスタマイズ費」だった部分が、EmDashでは「デザイン+Astro実装」の制作費になります。つまり、見た目への要望が高いほど制作費は伸びます。
一方で、環境費は安くなります。Cloudflare Workersの無料枠・月5ドルの話や、WordPress保守との3年比較は、料金を分解した記事に譲ります。環境費の安さと、デザイン制作費の高さを足して比べるのが、EmDash移行の費用判断の正しい形です。
見積もりを依頼する際は、発注前チェックリストと同じく「デザインの参照サイトがあるか」を最初に揃えてください。この記事で公開した再現プロセスは、参照サイトが明確なほど精度と速度が上がる方式です。
EmDashのデザインを相談する
このサイトの運営者(フリーランスのWeb制作者)は、上記の再現プロセスを使ったEmDashサイトの制作と、WordPressからの移行を受け付けています。進め方はハブの記事と同じく、調査レポートを先に出す形です。
- 問い合わせフォームに、参考にしたいサイトURLと現状を送る
- 調査レポートで、再現の可否・作業内訳・費用レンジを提示
- 納得できたら制作・移行へ
デザインの参照がない場合でも、デモサイトをベースにした提案から始められます。テーマ市場が整うのを待つ必要はありません。参照サイトのURLだけ、問い合わせフォームから送ってください。
よくある質問
Q. EmDashのテーマはどこで探せますか?
公式テンプレートはnpm create emdash@latest実行時にblog / starter / marketing / portfolioから選びます(2026-10-22実測)。サードパーティのテーマ市場は、この記事を書いている時点では発展途上です。公式ドキュメントの日本語版(EmDash CMS Everything)で最新動向を確認するのが確実です。
Q. WordPressのテーマはそのまま使えますか?
使えません。テーマの構造が異なるためです。見た目を維持する場合は、実測ベースの再現(この記事で公開した手法)か、新しいデザインの制作になります。
Q. デザインは自分で用意すべきですか?
参照するデザインがあるなら用意してください。再現精度が上がり、費用のブレも小さくなります。ない場合は、制作者が提案します。その場合も「雰囲気」ではなく、配色やタイポグラフィの仕様を数値で固めて進めます。
Q. AIでデザインを作れば安くなりますか?
コード生成は優秀ですが、デザインの最終品質は別の話です。公開実録でも「コードは優秀、デザインは壊滅的」との感想が共有されています。AIを道具として使いながら、仕様の数値化と目視点検で品質を担保するのが現状の最適解です。
Q. テーマが今後増えたら、作り直しになりますか?
既製テーマへ載せ替える場合は、ページの実装を作り直す可能性が高いです。ただしコンテンツ(記事・データ)は管理画面側にあるため、見た目の作り直しで記事が消えることはありません。
まとめ: 「テーマが少ない」は、制作者の出番でもある
- 公式テンプレートは4種(実測)。既製テーマ市場はまだ発展途上
- 「コードは優秀、デザインは壊滅的」の声は実測と整合する。基盤は良いので、見た目を作れば伸びる
- デザインは「既製で始める」か「Astroで自作する」の2択。実測ベースの再現プロセスを公開した
EmDashはまだ若いCMSです。テーマ市場が整うのは数年先。今、独自の見た目を手に入れたサイトが、デザインでも検索でも先行します。参考サイトがあるなら、実測での再現から今日相談できます。