ホームページを安定して運用し続けるために、最も費用対効果の高い備えは「サイトの資産」を1枚の台帳にまとめておくことです。サイトの資産とは、サーバー契約・ドメイン・解析ツール・CMSアカウントなどのこと。これらが誰の名義で、誰が管理していて、いつ更新なのかを1枚にまとめておけば、担当者の退任や制作会社との縁切り、障害のどの場面でも確実に動けます。
この記事では、台帳に記録すべき資産の種類、記入例つきのテンプレート、運用ルール、名義変更の実務までを解説します。要点は次の3つです。
- 資産は5種類: サーバー/ドメイン/解析(GA4・Search Console)/CMS/課金サービス
- 台帳に書くのは「契約者・管理者・更新日」の3点。パスワードは書かない
- 更新のタイミングは契約時・変更時・年1回の点検の3つだけ
なお、私はWeb制作を受注する側の制作者で、発注者のサイト資産を確認・整理する作業に何度も関わってきました。この記事の台帳テンプレートは、その経験で「実際に確認を求められた項目」をベースにしています。
ホームページを構成する5つの資産
サイトは1つの契約で動いているのではなく、複数の契約とアカウントの組み合わせで動いています。まず全体を確認します。
| 資産 | 内容 | この契約が消えると |
|---|---|---|
| サーバー | サイトのファイルを置く場所(レンタルサーバー等) | サイト全体が表示不能になる |
| ドメイン | サイトのアドレス(example.com 等) | アドレス自体が失われ、復旧が困難になる |
| 解析ツール | Googleアナリティクス4・Search Console | 集計データが蓄積されなくなる |
| CMS | WordPress等の管理システム(使っている場合) | 更新・投稿ができなくなる |
| 課金サービス | 有料プラグイン・素材・決済サービス | 機能が停止する |
このうち影響が特に大きいのはサーバーとドメインです。ドメインは名刺や検索に印刷されたサイトのアドレスそのものであり、失効すると復旧が困難です。制作費以上に価値のある資産なので、名義管理の最優先対象と考えてください。
サイトの構成選択(CMSを使うか否か)の考え方は自作か外注かの判断基準でも触れています。CMSを使う場合のセキュリティ固定費についてはセキュリティ対策の費用の記事も参照してください。
台帳がないと起こる3つの事故
台帳がない状態で起きる事故は、次の3つに集約されます。
- 連絡途絶→操作不能: 担当者(社内の兼務者・外部の制作者)と連絡が取れなくなり、更新も解約もできない
- 名義違いで移管不可: サーバー・ドメインが元担当者や制作会社の名義のままで、移管手続きが進まない
- 更新忘れでドメイン失効: 更新日の通知が担当者のメールボックスに届いたまま、誰も気づかない
どれも「悪意」ではなく「名義と期限の情報が1箇所にまとまっていなかったこと」だけで起こります。そして3つ目のドメイン失効だけは、後からの対応で完全に元に戻せません。
制作会社に任せきりのサイトでは「制作会社の名義のままでいいのでは」と考える会社もありますが、制作会社側の経営状況や担当者の退職の影響を直接受ける点で、発注側名義が原則です。名義の考え方は、個人に依頼したホームページの保守でも解説しています。
【テンプレート】管理台帳の項目一覧
台帳に記録する項目と、記入例を示します。1行が1資産です。
台帳の項目(列)の説明
| 列 | 記録する内容 |
|---|---|
| サービス名 | レンタルサーバー名、ドメイン名、ツール名など |
| 種別 | サーバー/ドメイン/解析/CMS/課金サービス |
| 契約者名義 | 契約した個人名・会社名 |
| 管理担当者 | 現在ログイン・操作できる担当者 |
| 管理URL | ログインページのURL |
| 更新日・支払 | 更新日(年次契約なら期限日)と支払方法 |
| 備考 | 移管の可否、連絡先、注意事項 |
記入例(台帳のイメージ)
| サービス名 | 種別 | 契約者名義 | 管理担当者 | 更新日・支払 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| example.com | ドメイン | 株式会社◯◯ | 総務部・田中 | 2027年4月1日・クレカ | 自動更新ON |
| レンタルサーバー◯◯ | サーバー | 株式会社◯◯ | 総務部・田中 | 2027年4月1日・請求書 | プラン: スタンダード |
| Googleアナリティクス4 | 解析 | —(無料) | 総務部・田中 | 更新なし | 管理者2名登録済 |
| WordPress | CMS | —(サーバー内) | 総務部・田中 | 更新なし | 管理者は発注側 |
この表をExcelやGoogleスプレッドシートで作成し、社内の共有フォルダに保存します。ポイントは、ログインに必要なIDは記録してもパスワードは台帳に書かないことです(次節で解説します)。台帳の紙面イメージは次の図のとおり、資産ごとに「名義・管理者・更新日」の3点を縦にまとめる形が確認しやすくなります。

制作を依頼する側としては、この台帳の存在が発注前チェックリストの「名義とソース納品」の項目を満たすことの証明にもなります。制作を始めるときに台帳の枠だけ先に作っておくのが、実務上は最もスムーズです。
台帳の運用ルール
台帳は作って終わりではなく、次の3つのタイミングで更新します。
- 契約・変更時: 新しい資産を追加したとき、名義や担当者が変わったとき。即日更新
- 年1回の点検: 更新日・支払方法・管理者の氏名が現状と合っているかを確認。更新月の前に設定しておくと漏れません
- 担当者の変更時: 退任・異動のタイミングで管理者の変更と台帳の引き継ぎを実施
保管場所のルールは3つです。
- 社内の共有フォルダに置く(個人アカウントの保存先は避ける)
- パスワードは台帳に書かない: IDとログインURLまで。パスワードはパスワード管理ツールに分離します。台帳が流出すると全資産が危険に晒されるためです
- 閲覧できる人を限定する: 経営者と担当者など、閲覧権限を持つ人を決めておきます
「誰が・いつ・更新するか」を決めておかないと、台帳だけ作って古くなるパターンに陥ります。年1回の点検日を決めておくだけで継続しやすくなります。
名義変更と移管の実務
台帳を整理した結果「名義が制作会社のままだった」ことが判明した場合の対処です。
ドメインの場合: レジストラ(ドメイン取得サービス)内で契約者情報を発注側に変更するか、ドメインごと発注側のレジストラアカウントへ移管します。移管には認証キー(オーソリティコード)が必要で、現在の契約者側の操作が発生します。期限が迫っているドメインは更新だけ先に済ませてから移管するのが安全です。
サーバーの場合: レンタルサーバーは「契約者の変更」に対応している事業者と、対応せず新規契約+移行が必要な事業者があります。契約しているサーバーのヘルプで契約者変更の手順を確認します。サイトのファイル自体は移さなくてよいケースが多いですが、事業者によっては引っ越し作業が必要です。
いずれも手続きには現在の契約者(制作者側)の協力が必要です。円滑に進めるためには、依頼時に交付した依頼書や契約書に名義・納品物を明記しておくことが、事前の防衛として機能します。
よくある質問
Q. 台帳は誰が保管するのが正解ですか?
サイトの運用責任を持つ担当者のいる部署が保管し、経営者や上長も閲覧できる状態が理想です。担当者1人のみが閲覧できる状態は「台帳を作った意味が半分」です。
Q. Excelで作れば十分ですか?
十分です。重要なのは項目の揃い方と更新の仕組みであり、専用ツールは必須ではありません。ExcelやGoogleスプレッドシートで、更新日順にソートできる形にしておけば運用できます。
Q. パスワードも台帳にまとめてもいいですか?
おすすめしません。台帳は閲覧範囲が広い文書です。パスワードはパスワード管理ツールに分離し、台帳には「管理ツール名」までを記録します。
Q. 制作会社の名義のまま契約を続けても大丈夫ですか?
継続的な信頼関係があり、書面で運用が明確になっているなら現状維持も選択肢です。ただし担当者の退職時に操作できなくなるリスクは残るため、少なくとも管理者アカウントの共有と台帳の整備は進めてください。
まとめ: 資産の「名義・管理者・更新日」を1枚に
- サイトの資産は5種類(サーバー/ドメイン/解析/CMS/課金サービス)。ドメインが最優先
- 台帳の列は「サービス名・種別・契約者名義・管理担当者・管理URL・更新日・備考」の7列
- パスワードは台帳に書かない。IDと管理URLまでを記録し、パスワードは管理ツールに分離
- 更新は契約時・変更時・年1回点検の3タイミング。担当者の退任時に合わせて実施する
台帳の整備を含めたサイト運用のご相談はお問い合わせフォームからどうぞ。既存サイトの資産確認・引き継ぎのサポートも受け付けています。